玉名ラーメン物語

めん

2006.04.12


 ラーメンの味は、スープとめんのバランスで決まると言われる。「それぞれが良くても、相性が悪ければだめだ」。頑固な店主たちは妥協を許さない。その思いはめん作りの職人も同様だ。
 玉名の老舗店など7軒を含め、30数店にめんをおろす熊本市九品寺の「宮本製麺(めん)所」。創業50年。ラーメン専門だ。
  工場には、生地をのばすための専用ローラーが4基。「4回に分けて圧力をかけることで、コシの強いめんができる。手間はかかるが、この工程は欠かせない」。二代目の宮本尊治(たかはる)さん(48)は言う。
 同社の場合、玉名のラーメン店は熊本などと比べて、一店当たりのめん消費量が多い。熊本の専門店への納入数は一日平均百玉前後。これに対し玉名は150~200玉、多い店は300玉。一玉の量も熊本より15㌘ほど多い130㌘。「うちの商売は玉名で成り立っていると言っても過言ではないですね」
 玉名で唯一、専門店にめんをおろす「吉田製麺所」(高瀬)。店主・吉田征史さん(60)は「コシはもちろんだが、製めん機にある微妙な凸凹でめんが不均一になり、スープがなじみやすい」と工夫を明かす。「人気の玉名ラーメンの一翼を担っているという気概を感じている」
 「玉龍」(岩崎)は玉名では数少ない「卵めん」。荒尾市の業者から仕入れる。通常より一玉十円ほど割高だが、「少々高くてもうまいラーメンを出したい」と五郎丸守さん(65)。
 ゆがき方にもこだわりがある。「ぐつぐつとした大がまの中で、踊らせるようにゆがくとコシのある食感に仕上がる」と「千龍」(高瀬)の中嶋龍一さん(49)ら。平ザルで大がまの中から、手際良くめんをすくい上げ湯切りする。「手間はかかるし、湯切りの見極めとスピードが難しいが、うまいものを食べてもらうため」と「大輪」(中)の坂本章さん(62)。
 極上スープにこだわりのめん。これにチャーシュー、キクラゲ、ノリなどを手際良く載せ、玉名ラーメンが出来上がる。好みに応じ、自家製揚げニンニクチップを店員に振りかけてもらうのが“玉名流”だ。

写真:4基のローラーで圧力をかけて作っためんを持つ宮本さん。スープとのバランスがとれうまいラーメンができる。

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