共同創作童話

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ショート・ショート

2006.6.9


よく道ですれ違う男がいた。
苗字くらいは知っていた。
会うと人懐こい笑顔で、何かしゃべらなきゃいけないとでも思っているかのように
「いい天気ですね」「雨が続きますね」と、話しかけてきた。
日焼けした顔は、笑い皺なのか元から皺の多い顔なのか、皺だらけといったかんじだった。だが、その男にその笑顔がそぐわなかった。
ずいぶん前から心の中に違和感があったのは、笑顔が似合わないのになぜいつも笑っているんだろう、と、どこかで思っていたかららしい。
ある日、その男とすれ違った。またか・・・と、思ったら、その時の男はニコリともせず、会釈をするどころかこちらを見もしなかった。その男の顔はなぜだかゆがんで見えた。

これだ、と思った。この男の本当の顔はこの顔なんだ。

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