共同創作童話

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「ともとも島」★第六部(最終章)★

2005.8.4


4人が、一仕事終え、幸せそうな顔でかんちゃんを待っていると、
どこからともなく、細身の男の人が現れました。
「おまた~!」
「えっと・・・どなたでしたっけ?」
ふみっちが照れながら聞くと、
「かんちゃんたい!」
と、その男の人は答えました。
4人は、すっころびそうになりました。
何回ころべばいいのでしょう。

「なんね?かんちゃんね!ほんとは人間やったったい!」
ともっちが初めからわかっていたような口振りで言います。
「うん、OWL先生が、カラスに化身しとった方が仕事のやりやすかろ? って」
「な~んだ」いなっちは、そう言いながらも半信半疑で、かんちゃんの周りをくるくる周り、どこかに羽が付いていないか確認しています。
「かんちゃん、会社の人に怒られんかったね?勝手に空飛ぶ船ば持ち出して・・・」
コロっちが小声で聞きます。
「大丈夫、慣れとるけん。OWL先生に頼まれて、学校まで送り迎えしたりしよる」
「・・・」
みんな返す言葉もありません。

「ところで、これからどこに行く?OWL先生のところ?それとも、あっそう次郎長老のところ?」
さすがふみっち姐、みんなをいち早く、現実に引き戻してくれます。
今までの手柄を思い出し、浸っていた4人(かんちゃんも人です)は、急にお腹が減っていたことを思い出し、それならやっぱり卑弥呼様のピザが食べられる "あっそう次郎長老のところ" だろう!と、決断しました。

「さあ!最後の力をふりしぼるわよ!!」
ふみっちの大声に、みんな勢いづきます。
いよいよ、長老へ、報告の時です。


四人と一人を乗せたHONMAのソーラーカーは夜の道をあっそう次郎長老宅を目指して快適に走っています。
色んな体験をした五人は疲れきった身体を労わるように、ぐっすり眠っています。
空には三日月と一緒にたくさんの星が、今にも零れんばかりに瞬いています。
そんな静かな静かな島の夜を、ソーラーカーは眠っているみんなに配慮して、揺れないように注意しながら運転していきました。


早起きのふみっちといなっちは、6時過ぎに目を覚ましました。他の三人はまだ夢の中のようです。
「もうそろそろ、村に着くね」小さい声でふみっちが言いました。
「うん。今、タラバ坂の横ば過ぎたところやね」いなっちが相槌を打ちます。
「ようやく、戻ってきたけど期日に間に合ったとかいな?」一週間の期限を思い出して、ふみっちが心配気に呟きます。
「う~ん、多分・・・」
二人は旅に出てから何回寝たかを数え始めました。

・1泊目:ふみっちコロ犬姉弟宅でピザ泊
・2泊目:異国の浜を目指している途中に野宿
・3泊目:更に野宿
・4泊目:異国の浜から神秘の森へ向かうソーラーカー車中泊
・5泊目:OWL先生宅から眠らない湖へ向かうソーラーカー車中泊
・6泊目:眠らない湖から村へ向かっている現在、ソーラーカー車中泊

「何~ね。一日も早いご帰還やなかね」ちょっと興奮したふみっちが少し大きな声で言いました。
その声で、まだ夢の中に居る三人のうち、ともっちがモソモソと起き出しました。
「ごめんごめん」と、ふみっち。
「もう、ふみっち姐さんは・・・」いなっち。
「う~ん。良く寝たぞい」ともっちが目をこすりながら「今日の朝飯は何?」と言って、二人の会話に割り込んでくるのでした。

ソーラーカーは、音も立てずに長老あっそう次郎さんの家の前に到着しました。
時計を見ると7時前です。
まだ寝ているコロっちとかんちゃんを見て、ふみっちが大きな声で目覚まし時計の役割を務めます。
「朝だ、あ~さ~だ~よー♪ 朝日が~昇~る♪」
二人は、ぴっくと動いて、続いておもむろに起き上がるのでした。
この数日間、毎日同じような朝の儀式になっていたのです。
7時を過ぎたころに「そろそろ、行きましょう」と、ふみっちが言いました。


この前と同じように門柱にある呼び鈴を押すと、あっそう卑弥呼様と愛犬クロではなく、あっそう次郎長老、自ら出迎えてくれました。
「ご苦労であったな。よくぞ期日内に帰ってきてくれた。今欲しい物は何ぞ?」
五人はお腹が空いていると言いました。
「恐らくそうだろうと思って、あっそう卑弥呼様にピザの用意をお願いしておいたぞよ」
奥さんに対して「様」を付けて言う、あっそう次郎長老が可笑しく、みんなは笑いを堪えました。


卑弥呼様のピザは美味しい上に空腹の五人にかかればあっと言う間です。
まだ、足りなそうな目をしている、ともっちやいなっちに
「昨日、博多屋さんから頂いたモノでよければ」と言って、卑弥呼様が持ってきてくれた”鳥のから揚げ”と”ごぼうの天ぷら”が、また食欲をそそるのでした。

お腹も満たされたので、ふみっちは島の神 ”モットモタケルノミコト”からの課題をひとつひとつ長老へ報告し始めました。

最初に、異国の浜へ行きました。
そこで、月の精「さくら様」にお会いし、天女の奇跡と光る砂を頂きました。さくら様は、"何事も成せば成る。あきらめない事である" と、仰いました。まるで自分に言い聞かせるように。

次ぎに、神秘の森へ行きました。
そこには、木の精「りん様」がいらっしゃって、天女の奇跡と光る葉を頂きました。りん様は、とてもお若く、木の精だけあって、檜とローズ混ぜたような香りに包まれておられました。

そして、一番怖かったのが眠らない湖におられた水の精「たまりん様」でした。たまりん様は、きれいすぎて近寄りがたい上、その周りには、たまりん様の一言で襲ってくるヘビやらトカゲ、もぐらの大群がいたのです。でも、かんちゃん、京いっち博士、G3ランプのおかげで、ここでもうまく天女の奇跡と光る雫を手に入れました。
「京いっち博士?G3ランプ?」あっそう次郎長老は、クビを傾げました。
「御存知ないのですか?ともとも島、唯一の発明家、京いっち博士を」ふみっちは、驚いて聞きました。
「京いっち博士は知っておる。しかし、もう数百年前に亡くなられておる。G3ランプとな?たしか京いっち博士が亡くなる直前、未完成で、終わっていたはずじゃ・・・」

「え~?」

4人は奇声をあげました。次ぎに、「あ!そうだ」とばかり、かんちゃんを見ると・・・
「あれ?かんちゃんは?」
「さっきまで、ここでピザを食べていたのに・・・」
「かんちゃ~ん!!」

その姿は、消えていました。

4人は不思議でたまりませんでしたが、あっそう次郎長老が、「では、そろそろ行こうか」と言うので、「どこへ?」という顔で、そちらを振り返りました。

「そなた達が持ってきたモノを「ハルウララの丘」へ捧げるのじゃ」

長老は、そう言いながら、4人の顔つきが天女の奇跡を探しに行く前と全く違った顔つき、目つきになっているのが嬉しくてたまりません。
そうです、彼らは逞しくなっていたのです。目には見えないくらいの自信が伝わってくるのです。

みんなは、かんちゃんのことなどすっかり忘れて、あっそう次郎長老の後を追って、「ハルウララの丘」まで駆け上がりました。

「ハルウララの丘」の頂上には、島の神”モットモタケルノミコト”を祭った小さな神社があります。
あっそう次郎長老と四人は、その神社の前まで行き、三人の島の精から頂いた天女の奇跡を捧げて、お祈りをしました。

「次はあっちじゃ」と言って、あっそう次郎長老が歩き出しました。
海側の突端に着くと「三つの光を海に向かって放つのじゃ」
四人は持ってきた三つの光”光る砂、光る葉、光る雫”を海に向かって高々と放り投げました。
三つの光は朝陽を受けてキラキラと輝きながら、海の彼方に落ちていきました。
その時、雨も降っていない空に突然、鮮やかな虹が現れました。
五人は、しばらくその虹に見とれていました。
「綺麗かね~」とか「うん。凄か~」
口々に言いました。

ふっと、神社の方に目をやると、何やら白い煙が上がっています。
五人は神社に戻って、白い煙の正体を確かめました。
先ほど捧げた三個の天女の奇跡が、音も無く白い煙とともに少しづつ少しづつ小さくなっていきます。
「蒸発しよっとやろか?」誰かが言います。
でも、誰も返事をしません。黙って、小さくなっていく天女の奇跡を見つめているのです。
そして、白い煙とともに影も形も無くなると、鮮やかな虹も消えて無くなりました。

「これでよし。全て終わったのじゃ。島のために良くやってくれた」
あっそう次郎長老が口を開きました。
「いいえ、どう致しまして」
ふみっちが応え、2人は堅い握手を交わします。

コロっちが近くの木になっていたアイスクリームをもぎ取ってきました。
「美味しそうやね」いなっちが言います。
「わしは焼酎が良かったな」とは、あっそう次郎長老。
「卑弥呼様がおられたら、何て言われるか・・・」ともっち。
「ホント、ホント」ふみっち。
「わっはっはっは~」
みんなは一斉に笑い声を挙げ、アイスクリームを食べました。


みんなの活躍のおかげで、ともとも島は崩壊せずに済みました。
争いも無い平和な島に、みんなはいつまでもいつまでも仲良く暮らして行きました。

めでたし、めでたし。。。

かんちゃんったら、どこへ消えたのでしょう?ま、いいか・・・

おしまい。

by 文:コロ犬、いなちゃん、ふみっち

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